今回は、少しこれまでと趣向を替えて、「不倫と結婚」という本について取り上げたいと思います。題名のとおり不倫について書かれている本なのですが、巷に溢れているような「不倫するなんてあり得ない」「不倫するなんて人として間違っている」と短絡的な結論を下している本ではありません。不倫した人された人、双方に寄り添い、丁寧に観察されたとても真面目な本です。では紹介していきましょう。
今こうして私が書評を書いている間にも、「世界のあらゆる片隅で、誰かが不倫をしているか、不倫されているか、不倫をしようと思っているか、不倫で悩んでいる人にアドバイスを与えているか、秘密の愛人となって三角関係を成立させようとしている(本書より)」らしいのです。不倫は、道徳的によくないものとされているため、なかなか当事者の口から外の世界に出ていくことは少な意ですが、芸能人が覚醒剤やその他の事件で逮捕されるようなニュースより、不倫のスクープが断然多い印象はありませんか?そのくらい不倫というものは、私たちの日常の中に隠れて存在し続けていると思うのです。筆者も、本書において、「あなたは不倫を経験した人はいますか?」と聞いても誰からも手が上がらないが、「自分の人生で不倫と関わりを持った人はどれくらいいますか?」と聞くと、圧倒されるほど多くの手が上がると述べています。こんなにも「不倫は悪」との共通認識があるにも関わらず、人はなぜ不倫をするのでしょうか。
これは本書を貫く大きなテーマです。結婚生活が破綻しているから?浮気性という病だから?新しい自分を見つけたいから?それとも、家庭は欲情の場ではないから?こういった疑問に対して、1つの答えはありません。一人ひとり考え方や状況によって答えが違うからです。筆者は様々な具体例を紹介しながら、不倫された人の気持ち、不倫した人の気持ちを受け止め、今後回復に向かうならば、2人が乗り越えなければならないことは何なのかということについて、真正面から向き合い続けた結果が記されています。本書を読むと、「不倫は悪」だけで当事者間の思いを無視して、批判される現状が果たして正しいのだろうかと、考えなおすきっかけになります。もちろん不倫はいけないことですが、その背景を無視して、当事者間へ勝手な正義を押し付けることが正解ではないと思えるのです。
・まさに現在進行形で、不倫(してる方・していない方)に悩んでいる方
・不倫した人をただ批判だけしてきたが、その背景についても理解を深めたい方
・不倫されても、夫婦生活を続けていくために、どのようなプロセスが必要かを知りたい方
不倫は日々の生活に関係ないようで、静かに潜んでいるものなのだと思います。自分自身が不倫を経験しなくても、仲良くなった友人や知り合いが不倫に悩んでいると知ったとき、どのように関わるべきなのかについて、ヒントを与えてくれます。完全否定で終わるのか、笑って流すのか、相手の気持ちを受け止めた上で寄り添っていくのか、本書を読んだ上で何が良いのか考えることが、人としての幅が広がるのだと思います。
私の周りにも不倫を経験した人や、結婚していなくても、浮気性の彼氏・彼女に悩んでいる方がいらっしゃると思います。「不倫や浮気やだめ」と思考停止するだけでなく、なぜそういう行動をとるのかについて、考えるきっかけがあることで、今の生活を続けるべきなのか、新しい生活を選択すべきなのかについて、答えが見つかるかもしれません。その事実に背景にどのような事情や理由があったのか、そこに目を向けたとき、未来への道が見えてくるかもしれません。
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